盈進中学高等学校環境科学研究部 (広島県)
この日採集できたキセルハゼは、従来は瀬戸内海と有明海付近にしか生息しないとされてきた日本固有種で、広島県の絶滅危惧種Ⅰ類に、国の絶滅危惧種1A類にされている。広島県では、30数年間生息が確認されていなかったため絶滅したのではと言われてきたが、近年何ヵ所かの干潟で生息が確認されているようだ。また、分布も三重県・愛知県など新しい個所が見つかっている。とはいえ、今回部員が採集した場所は、県のレッドデータの生息記録の地域と違うため、一応新発見となるかな。
ま、だれかが採集して「知ってるけど言わなかった」というケースはたくさんあるので何とも言えない。
採集中のシルトというかヘドロというか、全く臭くないのである。なるほどなあ。こういう場所なら、干潟での調査も苦痛にならないし、と思いつつ、部員たちが積極的に胴長を全員分洗ってくれた。
次の日は、祝日である。部員たちはさておき、1尾だけの採取では生息域として定着しているとはいえない。仕方がない。サポーターだけでもう一度行くしかないわな。で、すっかり干潟の魅力にはまったのである。付け加えると、翌日実際に1人のサポーターが、しっかり干潟にはまったのである。もう、埋まったまま約1時間泥からの脱出に渾身の力を振り絞っていた。
その間に、もう一人のサポーターが本種を2尾採取した。ほぼ生息しているといっていいだろう。と、泥をゴシゴシ落とし終えた運のなかった無駄に疲れ切ったサポーターの網に、最後の最後、また奇跡がおどずれた。春からずっと探していたタビラクチが入ったのである。わーい!
1.キセルハゼは冬に産卵するという。卵を抱えていたがまだ婚姻色は出ていなかった。クボハゼと長年混同されてきただけに、たしかに同定が難しかった。
2.キセルハゼのキセルは、頭部がミミズハゼのように膨らみ、胴体が細長いことから付けられたようで、よいネーミングだと思った。人の名前を付けたものや特徴からかけ離れた和名は、見直してくれたらいいなあ。
3.次々に絶滅危惧種が見つかっていく。この干潟は一体どうなっているのかと思うし、これまでの研究も含めて干潟は調査しにくいため、未知の出会いに満ちているなと思った。
4.この干潟のようなすばらしい貴重な宝石箱も、何も知らない人たちにとっては「ただの泥」いや「やっかいな泥」である。埋め立てられた干潟がどれだけあることか。とにかく多くのことを知り、伝えることからしか始まらない。楽しいだけで魚採りをしているわけではない! とは言い切れんなあ。
というわけで、翌日採取したタビラクチについては、次回紹介する予定です。
なお、今回の写真も採集場所が特定されないものを選んだため、あまり鮮明なものになりませんでした。ご了承ください。
盈進中学高等学校環境科学研究部(広島県)
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