盈進中学高等学校環境科学研究部 (広島県)
「7時半に迎えに行くよ。いいかい?」「もちろん!」降りしきる雨の中、上海での二回目の魚採りは始まりました。前夜、同じポイントでの採集、できる限り揚子江の魚たちを多く記録するため市場で新鮮な小魚を購入して撮影、そしてネットの地図であたりをつけた40kmほどの上流域で採集の3つを目標にしていました。
王さんは、なんと市場で採れたての小魚が入る時間を調べてくれていました。だから7時半出発だったのです。私たちは通路にしゃがみ込み、山のような魚から1種類ずつ取り出していきます。大迷惑です。お店の若夫婦も苦笑いしています。小1時間ほどして代金を払おうとすると、王さんとお店の奥さんがもめています。なんと王さんが勝手に自腹で代金を多く支払っていたのです。そして、奥さんはお釣りを渡そうとやっきになっているのです。市場で追っかけっこが始まりました。支払いは私たちなのに・・・
謝謝!の一言に尽きます。ポイントに着き、特製のエサを練り、仕掛けを沈めます。その間に撮影です。
サンプルとして王さんにおごってもらった揚子江の淡水魚は何種類もいて、雨の中の撮影は本当に疲れます。すると、忽然と水路のほとりの家からおじいさんが現れ「家の軒下においで。この椅子を使うといい。この台もどうぞ。」と中国語で言ってくれました(ような気がする)。そして、撮影の間ずっと、魚の名前を話しかけてくれました。85才だそうです。私の父とほぼ同い年です。息子になった気分です。
仕掛けは、王さんと運転手さんがずっと上げたり沈めたり・・・。「本当はそっちがやりたい。」と思いつつ、記録におさめ続けました。昼頃には、その家の方たちとも仲良くなっていました。と、なんと、家だとばかり思っていた場所は、メニューも何もない村の食堂というか集会所で、王さんは前日からその場所で昼食が食べられるよう段取りをつけてくれていたのです。高級魚であるケツギョや地の野菜のおいしいこと!おじいさんとの会話の楽しいこと!「今日はぼくがおごる!」王さんが強く言い切りました。追っかけっこはしません。甘えます。謝謝!謝謝!の連呼です。
この日も昼食後、中国スイゲンが数匹採集できました。昼飯食いにきとんかな? さあ、移動です。上流域に向けて、出発です。おじいさんと抱き合いました。目頭が熱くなりました。
1.神様は、本当にいるのかもしれない。一日目にして自分たちで決めたポイントで目的だった中国スイゲンが採集できたことだけでも奇跡だ。国内でも思ったように魚を採集できないのに・・・。
2.そのポイントのほとりの家が食堂をだったなんて偶然はあるのだろうか?信じられないくらいの感動だった。
3.市場の若夫婦も人が良すぎる。わがままな日本人客なのに、じっとサンプルを集めるまで待っていてくれた。お釣りの追っかけっこも本当にすてきだった。
4.大学院生の王さんは、なんで私たちの心が読めるんだろう?すべて先回りして心配りをしてくださった。
5.言葉が通じなくても気持ちは通じる。自然の中で生き物とやりとりしあっていると日本も中国も同じだ。みんなとってもやさしくて、雨で下着も靴下もずぶぬれに洗われたが、一番洗われたのは心だった。
この後、移動したポイントでも奇跡が舞い降りることになります。「やさしさにつつまれたならきっと、すべてのことがメッセージ」になるというユーミン(古!)の教えに導かれたのでしょう。
そのポイントでは、かなうとはとても思えなかったもう一つの夢もかなってしまうのです。そのことは、次回に報告します。この報告を読んで下さる方がいるとしたら、じらしておくのも手法の一つですもんね。
かなわなかったことを1つ書いておきます。OB部員が上海採集の不参加表明をしてきたことです。「試験も近いし・・・」なんて「そんなこと何も書いてこんかったじゃないか!」と、こっちもふざけ半分でしたからいいんですけどね。
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