盈進中学高等学校環境科学研究部 (広島県)
今回の魚類自然史研究会の最後の発表は「スイゲンゼニタナゴの取り扱いと保全について」ということで、長年この魚の保護活動を続けている私たちはとても楽しみにしていました。
ところが、発表の内容は北九州に生息するカゼトゲタナゴと山陽に生息するスイゲンゼニタナゴとの間に「殆ど形態的・遺伝的な違いはなく」さらに「朝鮮半島のカラゼニタナゴ、中国大陸のロデウス・ファンギとも極めて近く、それら4種を含めて、同一種として1つの学名で扱うべきである」というものでした。これらは、最近出版された「日本産魚類検索全種の同定第3版」に記載された内容を丁寧に説明したものでした。
激しい反論が研究者から出されました。2010・2011年に「カゼトゲタナゴとスイゲンゼニタナゴの遺伝子分析を行った結果、亜種レベルに十分相当する違いが出ている」ことを明確にした論文を誤った解釈で引用されているのではないか、とのことでした。
私たちもその論文そのものを読んでいるわけではないにせよ、その認識でいただけに驚きで一杯になりました。もしも、カゼトゲタナゴと同じということが正しいとなれば、「種の保存法」によってかろうじて密漁などから守られている状況が変わってしまうかもしれないからです。
何のことかよく分からない部員たちに「少なくともスイゲンという名前はなくなるだろうということと、この書籍に従って、これまでの論文を考慮せずに全部1つの種にするという考えを環境省が肯定すると、今の山陽地方のスイゲンは法的に守られなくなる可能性が高いこと」を説明しました。
すぐに論文を3つ送っていただきました。1つは日本文の要約で、残りは正式な英文の論文です。英語力がないなどと言っていられないので懸命に理解しようとしました。
確かに質問された研究者さんの言われた通りのことが書かれていました。
そこで、私たちは次のように決めました。
1.学術的にどんな位置づけになってもこの魚が絶滅寸前なのは確かなのだから、どんな状況になっても保護活動は続ける。
2.出版された本は、数万円という非常に高価な本なのにサポーターが予約注文してもまだ届かないほどの売れ行きで、その影響は大きいため、スイゲンゼニタナゴのところの経緯だけは行政や地域の保護活動に協力してくださっている方々に伝えていく。
3.10年以上続けている「スイゲンゼニタナゴ産卵母貝調査」を3月28日に環境保全課の方々と行うので、とりあえず話を伝え広げていただくようお願いする。
研究者の学者生命をかけた論争を目の当たりにしたことは、部員たちにとって収穫だったともいえます。が、保護活動を続けてきた当事者の立場としては、本当に後味の悪い終わり方でした。
ちなみに活動報告が遅れたのは、サポーターの英語力のなさが原因です。悔しいですね。英語をもっと勉強しておくべきでした。
ただ、この活動報告を載せることも保護活動の一環だと思います。長々と書きましたが、御支援宜しくお願いします。
盈進中学高等学校環境科学研究部(広島県)
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